前編からの続きです。
3個目もワッパー。
同じ味だと飽きるのでトッピングをしてみた。
バーガーキングは追加料金で好きな具をトッピングできるのだ。
これにはベーコン(3枚)とチーズを追加し、ベーコンチーズワッパーにしてみた。
重さもカロリーも増え、イベント的には不利かもしれない。
けど、美味しく食べないとそもそも意味が無い。
そのためには同じ味ばかり続かないようにするのが大切だ。
ベーコンのカリッとした食感と燻製の香りで新たな食欲が湧き上がる。
ふむ、チーズは1枚じゃ足りないな。
3枚くらい行っとくべきだったか。
ふと隣を見ると、くいしんぼさんが3つ目のワッパーに取り掛かろうとしていた。
よく見るとトッピングが・・・
・ビーフパティ1枚追加
・目玉焼き1枚追加
・ベーコン3枚追加
・チーズ4枚追加
なんだと・・・!?
ダブルベーコンエッグチーズバーガー!?!?
3つ目でそれを行くのか!?
この漢、頭と胃袋のネジが吹っ飛んでいる。
それでこそ我がライバルだ。
ふう、3つ目を完食。
前回のチャレンジではここが限界だった。
今回も胃袋も限界に近いし、気力も萎えている。
前回と同じ個数ならそう悪いこともあるまい。
くいしんぼさんも3つで終わりみたいだし、ここは仲良く終わりにしとくか。
「それじゃあボク、ここで終わりにしようかなァ?」
その時、くいしんぼさんの目がギラリと光り、その鋼のような豪腕による稲妻のようなストレートが俺の顎を捉えた。
ドグラガシャーン!!!
俺の身体は軽々と宙を舞い、客席に叩きつけられる。
騒然とする店内の客は注目、慌てふためく店員達。
薄れ行く意識の中でくいしんぼさんの重々しい声が聞こえる。
「ダニエル、お前の力はそんなものか。俺はもうここまでのようだが、お前はまだ力が残っているだろう。限界を超えた所に漢の魂はある。余力を残して戦いを終わらせては後悔しか残らんぞ」
そんな事言われても、今の俺に余力なんて・・・
いや、言われてみれば少しだけだが余力を感じる。
時間とともに炭酸が徐々に抜け、さっきまでは無かった胃の余白が生まれつつあるのに気づいたのだ。
そうだ、まだ戦えるはずだ。
俺はまだ前回の俺に並んだだけじゃないか!
前回の俺を超えるのは今の俺だ。
デヤァァァァァァァァァァァ!!!!!
再び蘇る闘志、店内に響き渡るは裂帛の気合。
俺はカウンターで魂のオーダーを通す。
「ワッパーもう一つ、エッグとトマト、それとピクルスを増量だ!!」
限界近くでの増量オーダーは正気の沙汰ではない。
しかし、くいしんぼさんの漢気に答えるにはこれしかない。
見ていてくれブラザー、俺はまだ戦う。
エッグの重さが、トマトの汁気が、オニオンの辛味が、マヨネーズの濃さが俺を容赦なく責め立てる。
謝って済むことなら謝りたいが、これは自分で選んだ道だ。
頼んだものを残すのは最低のマナーである。
「何で俺はこんなに苦しいことをやってるんだ?」
朦朧とする意識の中の自問自答、しかしどんなに厳しくても手と口を止めはしない。
止めなければいつかはゴールに辿り着くはずだ。
14時45分、ようやく完食。
長く苦しい戦いは終わった。
ワッパー4つとポテトとスプライト、なんと濃厚な45分間だっただろうか!
俺は過去の俺を確かに超えることができた。
しかし一人ではとても成し得なかっただろう。
強敵の存在が俺をまた一段、強くしてくれたのだ。
朋友と別れて帰路につく。
「何で俺はこんなに苦しいことをやってるんだ?」
さきほどの問いの答えは出ている
いや、そんなことは最初から分かっていたのだ
決まっている、好きだからさ。
好きな道なら誰が何と言おうと進むだけさ。
事を成し遂げた爽やかな気持ちで街中から見上げる空は曇っていた。
しかし、その雲の上には蒼く透き通った空が広がっているのだ。
完
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